富沢小径 / 三浦慎建築設計室 / ★★★

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作品HP:https://shinkenchiku-data.com/articles/SK_2018_08_108-0

所在地:東京都中央区日本橋富沢町7-5

設計者HP:http://www.miurashin.com/projects/%e5%af%8c%e6%b2%a2%e5%b0%8f%e5%be%84/

竣工年:2018

プログラム:事務所 共同住宅(賃貸)

構造様式:S造

敷地面積 73.87m2
建築面積 55.75m2
延床面積 352.73m2
外部仕上げ:
屋根 シート防水
外壁 南北:セランガンバツ張り 東西:塗装済みALCパネル(Clion:相番パネル)
開口部 スチールサッシ制作(Ogawa Tec. )アルミサッシ(LIXIL:PRO-SE70)
外構 コンクリート舗装

内部仕上げ:
事務所
床 複合フローリング(エフトレーディング:アカシア ハードブラッシュ)
壁・天井 タモ合板張り
住宅(3階・4階)
床 複合フローリング(エフトレーディング:アカシア UVオイル)
壁・天井 タモ合板張り

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人形駅から数分にある家業を営む昭和中期の小型~中規模建物が多い地域であり、バブルによる人口減に対する中央区の大型共同住宅への容積緩和条例により建て替えが進む。周囲にも高層の建物が連なるため、縦長に細長比が大きい建物であることはボリューム感として合っているように感じる。小規模EVの最大昇降高さ・2直階段を不要とする高さから高さ関係のボリュームを決めたとのこと。

階段による面積減を最小にするために、ファサード面に対して外部階段が設けられる。そのため、最低限の意匠で取り付ける場合が多い外部階段が構造を担保した上でなるべく細く接合部が見えないように丁寧に設計されている。最上部の外壁からのブレース、各階への入口のスラブと外壁の間の金具、各階スラブ間の細い鋼管により支えられる。階段でジャンプしてみたが揺れはない。手すり子の外側に階段状に切り取った側桁をかぶせ、外側から手すり子の接合面が見えないようにしている。消防上必要な設備機器も最低限の大きさで設置される。

外装材のセランガンバツは適度に色のばらつきがあり良い雰囲気。反対面のベランダの鉄骨スラブはむき出しで良い雰囲気を出している。

内部を見ることはできないが、合板とAEP白塗装・モルタル・デッキプレート表しなどコストの安い材を用いながら、レベル差による空間の切り替え、天釣りの家具などを用いて自分のしたいことをやりながらスッキリとした空間を作られていると想像される。風呂をカーテンによるパーティションのみなのは攻めている。設計者の住宅が最上階、設計事務所が最下階にあり、自分の設計した住宅に住み働くのは贅沢で羨ましく、自分もこういう風にしたいなと思った。

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職住近接の街に住まう (設計HPテキスト)

人形町駅から数分の, 家業を営む昭和中期の小型~中規模建物が多い地域である. バブルによる人口減に対する中央区の大型共同住宅への容積緩和条例により, 建て替えが進む一方で,近年は古い建物のリノベーションが始まったエリアでもある.建設費の高騰に加え, 5階以上の住居の制限, 2直階段の制限,耐火構造の制限など,数十年前とは比較にならない法規制の中で,かろうじて新築でも個人事業 者にとって成立する規模として, 今後の耐用年数を含め,新築で計画することとなった. この地域へは,私自身15年前に築40年の建物を改装して移り住んだ.そこで見えてきたことは,空間からは失われた江戸が個人の中で生き生きと残っているという, 人の風景であった.この街では春から 秋にかけては毎週のようにどこかでお祭りがある. 表から見る戦後の建物群は,中の様子も分からないファサードの連なりなのだが,いざ街のこととなると放っておけない人たちが通りに出てきて支え合っている.よく見ると,小中規模の建物の各層からはいろいろな世代・職業の人びとが現れる.昨日はバイク屋,今日は小料理屋といったように,時代や世代の中で柔軟に家業自体も変化させながら,上に下に移動を繰り返し,街を維持する.ここはそんな人びとの職住近接の街なのだ. 建物規模は,小規模ビル用EVの最大昇降高さ+2直階段を不要とする5階以上の住居サイズ(5階のみに玄関を持つメゾネット)から決めた.耐火被覆の柱や梁を避けながら法的屋内階段幅をとると,最上階までの面積ロスは大きくなっていく.表に階段を出 すことで,それらを抑えながら,上下階の関係が街並みに表出する場とした. 階段の折り返しから階高を決め,その階ごとに大きく開く扉とテラスを設け, どのユニットも,仕事場にも生活の場にもなる土間を並べている.区の容積緩和は,既に人口目標を達成し, この夏の終了が決まる中, 今年中に, この建物周囲だけでも9つの建物が3つのマンションに建て替わっていく. 建物の大型化による容積の緩和自体を否定しないが, この街の職住近接のよさを鑑みると, むしろ低層部数層への仕事場の設置の義務付けを緩和条件にする方が街の魅力を伸ばしてくれるのではと思っている.