主として建築設計者のためのBIMガイド / 次世代公共建築研究会 / ★★★★

 米国の設計システムと日本の設計システムの相違

・設計について、日本は総合設計事務所が一括して請け負う。米国は基本計画、基本設計などそれぞれの段階ごとに分離発注的な事例も多い。そのため、全体をまとめるPMが必要。

・施工について、日本はゼネコンが一括して請け負う。米国はサブコンが集まって、CM会社がまとめる。

・総合図について、日本はゼネコンが設計者の実施図を基に総合図を作成し施工図とする。日本ではBIMで施工図を描いてもゼネコンが総合図を作成する段階で描き直されるため設計事務所のBIM図は使ってもらえない。米国は設計者が描く図面が施工図として使用され、施工図に従って描く業者ごとに製作図が作成される。そのため施工図に高い整合性が求められ、ゼネコンが描く総合図を設計事務所が描いているので設計料が高い。

コストコトロールについて、日本は設計者はとりあえずコストが拾える図面を描き、それをゼネコンが精度の高い施工図を描いてくれるので、デザインの細かい所は現場で決めることになる。現場の建設費でもめる場合が多い。米国は、デザインを十分詰めた上で施工図を作成し、QSに見積をしてもらいCMを中心としたサブコンに施工を依頼する。

・見積について、日本はゼネコンが縦系列で押さえているため、サブコンだけの値段が分からず、ブラックボックスになっている。工事分離発注システムでないと正確な価格が分からないため、BIMによるコスト管理が難しい。米国はCM+サブコンで入札するため、欧米式の詳細な実施設計に基づいてサブコンから直接競争見積りをとるから現場と価格がぶれない。

・施工の契約方式について、日本は設計施工請負システムが主流で同じ会社によって設計も施工も管理されることになり、施工の品質を設計側が独立した客観的な立場でチェックすることは難しい。米国は分離発注方式が主流であるがクライアントの契約の煩雑さからデザインビルドでの契約も増えている。設計者が第三者的な視線な管理ができずオーナーが不利益を被らないための契約が作られる事が多い。

 

BIM活用の問題点

・設計で施工レベルのBIMを作成しても、施工部門で再びモデリングし直す場合が多い。

・データ交換の際に、全角文字でエラーになる日本語特有の悩みとデータサイズの問題がある。

・BIMモデルへ情報の集積度が上がるほどファイルサイズが肥大化しオペレーションに支障をきたす

 ・国土交通省がBIMモデルのガイドラインを作成しているが、具体的な雛形や記載例は提示されていない。海外ではBIM実施計画書が政府より提示されている。

 

BIM活用の成功点

・搬入などの施工手順のシミュレーションを実施しアニメーションで確認

・BIMデータを用いた高精度の温熱環境シミュレーション

・コンセプト段階からの環境解析アプリケーションの利用

 

BIM導入のコツ

・いきなり全ての図面をRevitで作成するのではなく、慣れない内は断面詳細図や部分詳細図は2DCADでの作成をするのが良い。

・元来の2DCADの図面を同じ質の図面に合わせるのではなく、Revitの仕様の図面を描くという意識をする。

 

BIMの著作権

・建築設計を受注した設計者がBIMデータの原著作権をもつ。一方で、維持管理者、施工者などのBIMデータ作成サポート者、ライブラリの部品データ作成者にも共同著作者に該当する場合も有り得る。

・BIMデータを建築使用期間中も使用する場合、収入を得る機会だと考え著作権を主張する場合も有り得る。その場合、権利を主張すると同時にBIMデータの間違いによる責任も負う必要があり、建築主やオーナー等それぞれ不利益を被らないような契約を結ぶことが重要。